| 9・14 vol.2
*海を見ていた午後*
いわゆる男の子と、初めてデートをした由縁の曲だったと思う。
何しろふられっぱなしの人生で、
19歳の春まで、特定の男性と付き合ったことがなかったから、
当然、この曲を初めて聞いた時も、相手はいなかった。(^^;)
歌に出てくる、ドルフィンにどうしても行きたいと思ってはいたが、
ひとりソーダ水を飲みながら、
貨物船を見送るというシチュエイションは、
孤独な私には、はまりすぎるほどはまってしまう光景で、
あまりにもむなしすぎるから、独りで行く勇気はなかった。
誰かを誘いたかった。
いま思うに、相手は誰でもよかった。
でも、女友達じゃ・・・やっぱり男友達を誘うか・・・と。
ただ、私のイメージの中で、
あくまでもその歌の雰囲気を壊すような子じゃ
だめだったから、むちゃくちゃわがままだけど
比較的美形で、人様の鑑賞に絶えられるのが条件だった。
当時、知っている範囲では、美形はいなかった。
そんな時ふっと目の前に現れた人が、その人だった。
新入生歓迎のコンパで知り合った人だった。
私にはもったいないくらいに、美形の男の子で、
とってもやさしかった。
あったとたんに、
この人ならあの歌の風景に溶け込めるに違いない!
とぴんときてしまった。
私が、すぐに「ドルフィンへ行こう」と誘うと、
思いがけずも「いいよ」と乗ってきた。即決まり。
次の日、二人で、横浜へと向かっていた。
こんなうまくいくなんて変だと思いながらも、
念願がかなうことの方で頭がいっぱいだった。
歌の通り、坂を登っていくと、たしかにその店はあった。
けど・・・まず外観が、ちょっとイメージと違っていた。
もっと周りに何もない所だと思っていたのに
・・ううん、残念だなあ・・・
なんて思いながら店に入ると、入ってからも、ずれは生じた。
窓の外には、三浦岬が見えるどころか、
工場の煙突が立ち並んで、
海すらも良く見えない。
こんなはずじゃあ・・・・・なんだかがっくりきてしまった。
その男の子には悪かったが、
おしゃべりをする気にもなれないほどショックだった。
しかし、ソーダ水が運ばれてきて、
少しずつ口にするうちに立ち直った。
だって、紛れもなくこの場所にユーミンは腰を下ろし、
この景色を眺め、このソーダ水を飲んだのだ。
そして、あの歌ができた。
絶対、あの光景はここにあったはずなのだ。
きっと作ってから時が経っているから、何もかも変わったんだ・・・
と思うことにした。
ともかく時間差はあるにしろ、
ユーミンがいた同じ場所にいられる
というだけで、ほんのりと幸せが込み上げてきた。
気を取り直して、ユーミンの歌の世界に再び入っていくと、
なんだか遠くに三浦岬が見えるような気がした。
そうしたら、ソーダ水も格別おいしく感じてきた。
すっかり、私はユーミンになりきっていたのだ。
結局その男の子とは、何事もなく終わってしまって
恋とか、愛には発展しなかった。
要するに、私は、彼にではなく
ユーミンに恋をしていたのであった。
本当に申し訳ないことをしたと
今でも思うが、
その時彼も、ユーミンの世界に浸れたのかどうかは、
定かではない。
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